リチウムイオン電池の開発最前線に異変

トヨタ自動車が安全性の問題を理由に、次世代技術として注目されるリチウムイオン電池のハイブリッド車搭載を遅らせるという苦渋の決断をした。欧米勢が小型でも高出力を発揮できるリチウムイオン電池の事業化に対する投資に躊躇するのを尻目に、ソニーを皮切りに三洋電機、松下電池工業などの日本企業は1990年代前半に実用化のための技術や製造ノウハウを確立、以来、生産設備の積極投資に踏み切ると同時に市場開拓に力を入れてきた。今や世界で販売される携帯電話やノートパソコン向けのリチウムイオン電池は日本製コバルト酸リチウムイオン電池が圧倒的なシェアを誇る。米国は日本製リチウム電池を買い続けてくれるお得意様に過ぎない存在だった。ところが、トヨタがリチウムイオン電池の次世代ハイブリッド車への搭載を延ばしたことで、この構造に変化が生じ始めている。アメリカのベンチャー企業の研究開発力と韓国や中国の低コスト生産力が手を組めば日本のメーカーも楽観は出来ない。メモリーや液晶のように安易に技術供与してお株を奪われては元も子もない。そしてソニーのリチウムイオン電池のように、安易に海外の子会社で生産して欠陥品を出してはならない。リチウムイオン電池こそガソリンエンジン車に代わる次世代自動車の中核技術なのだ。

iMiEVはリチウムイオン・バッテリーを搭載

三菱自動車は今月から、愛知県岡崎市の岡崎工場で開発を進めている軽自動車タイプの電気自動車i MiEV(アイミーヴ)について、2009年の実用化を目指して路上での走行性能などを調べる実証試験を始めた。富士重工業も09年の販売開始が目標で、電気自動車の実用化は秒読み段階だ。走行中は2酸化炭素を全く排出せず、環境対応車(エコカー)として期待される。最近の電気自動車(EV)は、パワーもトルクもすばらしい進化を遂げている。三菱自動車 アイは、床下に重たいリチウムイオン電池を積んでいるため、ベースのガソリンエンジン車よりも重心は70mm下がり、安定感を感じられる。その重さをまったく感じさずに、実に軽快に走る。軽自動車のアイ(i)をベースに作られ、愛嬌のあるスタイルである。ボディサイズは三菱アイと変わらないが、車両重量は180kg重い1080kgで、パワートレインを床下配置したことは低重心化と共に、大人4名が無理なく座れる居住性にも寄与している。最高速度130km/h、一回の充電(バッテリーが80%充電)で走れる距離は10.15モード換算で160kmとなる。ハイブリッドカーにも使われている技術の回生ブレーキにより、ブレーキを踏んだ時、あるいはアクセルを戻した時に、モーターが発電器に替わる。モーターは電気を流すと力を生み、力を加えると電気を産むという原理(フレミングの法則)に基づいている。発電された電気は再利用するためにバッテリーに溜められる。

電気代はガソリン車のガソリン代の約9分の1

電気自動車i MiEVは今後、2009年に公共施設向けに販売することを目標に、開発を進めている。実証実験に参加し、業務車両として使っている電力会社3社の評価では、「十分に動力性能があり、幹線道路の流れに楽にのれる。走行中の静粛性がよく、業務で使用する荷物は十分に積める」という。ガソリンエンジンと比べたメリットとしては、“燃費”の良さがある。たとえばガソリン代がリットルあたり140円で、電気料金が昼間22円/kWh、夜間7円kWhの場合で比較してみる。同じ距離を走るための電気代は、昼間電力でも3分の1、夜間電力なら9分の1の金額で走れる。またEVはどこで充電するのかが、実用上の大きな問題になる。アイミーヴ(i MiEV)は車載の充電器を使って、家庭のコンセントでも充電が可能だ。家庭用電源でフル充電する場合には、100Vで約14時間、200Vで約7時間。200V電源を導入していれば、一晩でフル充電できる計算になる。電力会社と共同開発した「3相200V−50kW」の急速充電器を使えば、約30分で80%まで充電できる。これがショッピングセンターの駐車場などに備え付けられれば、買い物中に充電できる。クルマ単体としてみれば、多くの軽自動車ユーザーが目的とする、買い物や家族の送り迎えには十分な実用性がある。しかも静粛性や経済性、動力性能などでは、すでにガソリンエンジンのクルマを上回るところまで、完成度が高まっている。
電気自動車の詳しい情報はこちら

Copyright © 2008 リチウムイオン電池搭載の三菱「アイ・ミーブ」